
いつも元気に過ごすために
生活習慣に注意することが健康の鍵
近年、犬の平均寿命が延びたことで、加齢に伴うさまざまな病気が見られるようになってきました。人と同じように、年齢を重ねることで体の機能が低下し、病気のリスクも高まります。
主な死亡原因としては、ガンや心臓の疾患、腎不全などが挙げられ、いずれも早期発見と継続的なケアが重要です。また、生活環境の変化や運動不足により「メタボ(肥満、運動不足)」の傾向が強まり、糖尿病などの生活習慣病に加え、関節の不調や心臓・呼吸器の疾患が増加しています。
犬種ごとに適した生活は異なる
日本では多くの種類の犬が飼われており、一般的な犬種だけでも数十種類にのぼります。
それぞれの犬には、育った地域や遺伝的な背景により、体質や健康面での特徴があります。そのため、犬種によってかかりやすい病気や注意すべきポイントも異なります。愛犬の性質や体の傾向を理解し、それに合った暮らし方やケアを選ぶことが、健康を守り、長く一緒に過ごすための大切なステップです。

子犬期・ジュニア期

人にたとえると、赤ちゃんから小学校を卒業するくらいまでの時期にあたります。
生後1~2か月齢ではまだ体が小さく、日々の成長を大きく感じられる頃です。
この時期は好奇心が旺盛で、さまざまなことをスポンジのように吸収していきます。
生後3~4か月齢になると成長のスピードが緩やかになり、性的に成熟してくる子もみられます。
★たくさん来院して仲良くなりましょう
子犬期は、月ごとに体重を測り、その子の成長を間近で感じましょう。
これからどういう生活をしていったらよいか、今ある問題点にはどう取り組んでいったらよいか、また、当院がどのようにサポートができるのか、病院にお越しいただく際には、ぜひお話しながら一緒に考えていきましょう。
まずは、さまざまな環境に慣れさせてあげましょう

おうちに迎えたばかりの子犬は、無邪気に見えても環境の変化を敏感に察知し、戸惑いや不安を抱えています。この頃に積極的にかまい過ぎることで、睡眠不足やストレスが積み重なり、体調を崩す子犬も少なくありません。だからと言って、一人っきりにしてくださいというわけではありません。
子犬に新しい環境に慣れてもらうには、人がいる空間でもくつろげる場所を用意し、寝ている時はあまり邪魔をしないこと。子犬が起きている時や自分から寄ってきた際には優しく声をかけてなでてあげましょう。お互いに少しずつ距離を縮め、信頼関係を築き上げていくことが大切です。
いろいろな物や状況に慣れていくことで、将来のための土台を作ることを意識して育てましょう。
生活のポイント
体がまだ未熟であるため、突発的な病気やけがが起こりやすい時期でもあります。ただし、その中には飼い主様が環境を整えることで予防できるものも多くあります。日常の中で十分に注意して見守ってあげましょう。また、食べ物かどうかまだ判断が付かない時期ですので、お散歩中の拾い食いや、おもちゃの誤飲などにも気をつけましょう。
未熟で小さい体は低体温になりやすく、また、食事の間隔が開き過ぎると低血糖症にもなりやすいです。まずは暖かい環境を用意しましょう。
季節によってはヒーターや毛布等も必要になります。
食事は必ず栄養価の高い子犬用の食事を用意してください。最初のうちはふやかしたり、1日の食事回数を増やすなどの工夫をしましょう。
また、大きな音や振動など、ストレスの少ないリラックスできる飼育環境を用意してあげましょう。
適切な運動量はその個体によって変わりますが、はじめのうちは散歩などを通して動くことの楽しさを一緒に共有しながらコミュニケーションをとりながら、いろいろな経験をさせてあげましょう。少しずつ経験を重ねながら、その状況を好んだり、平気になっていくことを目指しましょう。
運動機能が未熟な場合があるため、段差や道路の側溝などへの落下や、物の隙間に挟まってしまうなど、事故防止にも注意しましょう。
※ドッグランを、初めて利用する際は特に注意が必要です。
なるべく怖い経験とならないように、個体によっては、状況を見て利用するかどうかを飼い主さんが判断することも大切です。
予防医療
子犬の混合ワクチンは生後6-8週齢に最初の接種を行います。その後は3-4週間ごとに接種を繰り返し、16週齢ごろに最後の接種を行えるように調整します。
多くの場合は子犬の混合ワクチンは3回接種が必要になります。
ペットショップやブリーダーから子犬を迎えた場合、1回目の接種がすでに終わっている場合が多いと思います。その場合には接種証明書に書かれた日付を目安に動物病院にご来院下さい。その際には1回目のワクチンの接種証明書をお持ちください。
まだ一度も混合ワクチンを接種していない場合は、まずは病院につれてきていただき、相談後に1回目の接種を行います。
自宅に迎えたばかりのわんちゃんは、環境の変化によって強いストレスがかかっていると思われます。一週間ほどは様子をみて、ご自宅の環境に慣れてから病院で予防接種を受けさせるようにしましょう。ワクチンの接種予定日は目安ですので多少遅れても問題ありません。
また、狂犬病予防法により、わんちゃんには狂犬病予防接種と登録が義務付けられています。混合ワクチンのタイミングも一緒に相談しながら接種していきましょう。
定期的なフィラリア症・ノミ・ダニの感染予防等も成長過程を一緒にチェックしながら実施していきましょう。
ワクチン終了前からも色々な経験をさせてあげましょう

特に生後4か月齢頃までは社会性を学ぶ大切な時期ですので、将来に向けて色々な経験をさせてあげてください。
ワクチン終了前でも、抱っこで散歩することで、外の空気に触れさせたり、好きなおやつなどを使ってさまざまな物音や目で見る情報に良い印象をつけることがコツです。
ワクチンが完了したら、実際に地面を歩かせる散歩を始め、色々な場所に出かけたり、他の人や他のわんちゃんと触れ合う機会をつくってあげるのもよいでしょう。
また、正しいしつけは、飼い主とわんちゃんの信頼関係をつくる上でとても大切なことです。感受性の高いこの時期からぜひ始めましょう。
避妊・去勢手術
避妊・去勢手術を行う適切な時期は、生後6か月齢頃とされています。メスの場合、生後6か月は最初の発情期を迎える前の時期にあたり、この段階で手術を行うことで将来の病気や問題行動のリスクを減らす効果が期待できます。
オスの場合も、成犬になる前に去勢手術を行うことで発情によるストレスが軽減され、マーキングやマウンティングなどの行動が少なくなる傾向があります。さらに、精巣腫瘍、前立腺肥大、肛門周囲炎、会陰ヘルニアなどの病気を予防できる点も大きなメリットです。
また、発情期を迎える前に避妊や去勢を行うことで、望まない妊娠を防ぐことにもつながります。それぞれのメリットとデメリットを十分に理解したうえで、手術を検討されることをおすすめします。
ただし、乳歯の生え変わりのタイミングや発情時期、体の成長のスピードは個体ごとで異なり、一概に避妊・去勢手術はいつがいいと決めることは出来ません。
ワクチン接種や身体検査等で通院していただきながら、その子にあった適期を考えましょう。
しつけのポイント

この時期のわんちゃんは、新しいことをどんどん学びます。そのため、「吠える」「かむ」「あちこちで排泄する」といった行動が見られることもあります。飼い主さんにとっては困ることかもしれませんが、犬の本来の性質による行動のため、完全に止めるのは難しい場合もあります。この点を理解したうえで、うまく対応することが大切です。
わんちゃんの行動に向き合うときは、まず気持ちに寄り添うことが基本です。状況によっては、別の行動に誘導してあげると効果的な場合もあります。また、「成功したら褒めてもらえる」とわんちゃんが感じられるように、できたことを認めて成功体験を増やしてあげることも大切です。
成犬期

心身ともに成熟し、「少し落ち着いてきた」と感じる飼い主さんもいるかもしれません。人でいう働き盛りの時期にあたり、健康面も安定していますが、その分、日々の健康管理が重要になります。バランスの取れた食事や適度な運動に加え、定期的な健康診断や生活に応じた予防(ワクチンやフィラリアなど)を続けることが大切です。また、この時期に増えやすい皮膚や胃腸、耳、泌尿器のトラブルは、日常生活の中での少しの変化に気づくことで早めに対処できます。
生活のポイント
1歳になったら、成犬用の栄養バランスが整ったドッグフードに切り替えましょう。骨や消化器の働きが安定してくる一方で、体重が増えやすい時期でもあります。食事やおやつを与えすぎないよう注意し、誤って食べてはいけないものを口にしないよう管理することも大切です。皮膚のケアをしたい子、関節のケアをしたい子、体重管理をしたい子、その子にあった食事を探してあげましょう。
肥満を防ぎ、ストレスを減らすためにも、運動はとても大切です。運動不足による問題行動(物をかじる、吠え続けるなど)が減ることもあります。この時期も、犬種に合った運動量や方法を考え、適切に運動させましょう。
定期的な健康診断
わんちゃんによっては、内臓やホルモンの病気、目や歯のトラブルなど、これまでより長く続く症状が少しずつ現れる時期です。こうした変化を見逃さないよう、これまで以上に早期発見と早期治療を心がけましょう。
健康診断では、一般的な身体検査や血液検査に加え、胸部・腹部のレントゲン検査や超音波検査なども選択肢として検討すると、より安心です。
病気のサインをセルフチェック
- いつもより元気がなく、食欲も落ちている
- 少しの運動でも疲れやすく、息が上がる
- 歩き方に違和感があり、足を引きずるような動きがある
- 体に触れた際に突然大きな声で鳴く
- 水を飲む量が以前よりも増えている
- 排泄物の色やにおい、回数に変化がある
- 下痢や嘔吐が何日も続いている
- 咳をすることが増えた
- くしゃみや鼻水、鼻づまり、鼻血などの症状が見られる
- 口臭が強くなったり、よだれの量が増えたりしている
- 体を頻繁にかゆがり、皮膚が赤くなったり、できものができている
少しでも心当たりがあれば、早めに病院を受診しましょう!
シニア期・老齢期

一般的に、わんちゃんは年齢を重ねるにつれて活動する時間が減り、睡眠の時間が増えていきます。
さらに高齢になると、トイレの失敗など、これまでと異なる行動を見られたり、認知症に似た症状が現れることもあります。
長年共に暮らしてきたわんちゃんが、最期まで幸せに過ごせるよう、愛情をもって接してあげることが大切です。
生活のポイント
わんちゃんは、決まった寝場所で過ごす時間が増えてきます。また、足腰が弱くなり、つまずいたり滑りやすくなることもあります。そのため、段差をなくしたり、毛布やマット、ラグを上手に使ってあげましょう。さらに、トイレや水飲み場は数を増やすなどして、わんちゃんが使いやすいように工夫してあげることが大切です。視力が衰えてくる子も多いため、生活環境では角をガードしたり、物の位置を頻繁に変えないなど、安全に配慮してあげましょう。
高齢になるにつれて、病気を抱えながら生活をしている子も多くなってきます。
病気のケアを考えた食事や、水分補給のためのウェットフード等をおすすめすることがあります。
状況に応じてサプリメントなどを補助的に取り入れることで、健康を維持しましょう。
わんちゃんのペースに合わせて対応しましょう。歩くことができる場合は、足腰への負担を避けるため、階段や段差の少ない緩やかな散歩コースを選ぶとよいです。歩行が難しい子でも、外に連れ出して空気に触れさせることで、1日の中で変化を感じさせてあげることができます。
定期的な健康診断・病気や変化への対応
小型犬の高齢期に多く見られる病気の一つが「僧帽弁閉鎖不全症」です。これは、心臓の左上の部屋(左心房)と左下の部屋(左心室)の間にある僧帽弁という弁が、何らかの原因で変性し、しっかり閉じなくなることで血液が逆流してしまう病気です。完治や予防が難しい病気ですが、早期に発見することで進行を遅らせることができます。そのため、定期的な健康診断がとても重要です。病気が進行すると、聴診で心雑音が確認されることがあります。ご自宅では、運動時の様子(疲れやすくないか)や舌の色(青紫色になっていないか)などをチェックしてあげましょう。また、人と同じように、腫瘍疾患も高齢期に増えてきます。体調に少しでもおかしいと感じた場合は、長く様子を見ず、早めに受診することが大切です。
ターミナルケアのサポート

わんちゃんは犬種ごとに体の大きさや体重にばらつきがあるため、体のサイズや状況によっては床ずれができやすかったり、頭をぶつけやすかったりと、生活の中で注意するポイントが異なります。
ご家庭に寄り添ったケアを一緒に考えます
介護をする中では、ご家庭の状況や時間の制限などから、一般的に言われるような正しい介護・理想の介護が出来ない場合も起こり得ます。
そして、ペットの幸せのためには、飼い主様自身の幸せも必要です。
最期を迎えるその時まで、いろんな工夫をしながら協力し、生活のサポートをさせていただけたらと思います。
